世界で活躍する二胡奏者Zhao Leiさんのレッスンを受ける
- 郁代 麓
- 2023年10月30日
- 読了時間: 7分
先日、世界で活躍される二胡奏者Zhao Leiさんの個人レッスンを受けてきました。 日本ツアーの各地でレッスン時間枠を作ってくださっているようで、チャンスは年に一回!しかも1時間弱。 そんなレッスンで何を聞きたいか? 何を得たいのか? すんごい考える。

Zhao Leiさん
上海音楽学院出身の二胡奏者Zhao Leiさん。海外での演奏活動も多くされている。 中国は日本人からすると想像を絶する大きさの国だから、北と南に分けるのはあまりにも大雑把な気がするが、そうは言っても北(北京側)の人が奏でる音と、南(上海・蘇州側)の人が奏でる音楽は、弾き方も音質も違う。 北京は秋田、上海は鹿児島と同じあたりの緯度になる。 食べる物も気候も違えば、人の性質も変わるし、奏でる音楽も変わってくるだろう。 上海音楽学院出身のZhao Leiさんは、南の音を出される。 私は、どちらかといえば南方の奏者の奏で方の方が好きみたいだ。
Zhao Leiさんのコンサートには、残念ながらいくことが叶わなかったのですが、youtubeなどできくZhao Leiさんの音はとても洗練されている。クラシックがお好きなのだろうと想像する。 そして超絶技巧!一般人にとってみれば、そのあたりはもはや「お〜〜うわ〜〜」と絶叫見物するしかない(笑。 もう真似できる域ではないので。
レッスン当日のZhao Leiさんと初めての対面。若々しさとエネルギッシュさが溢れまくっていた印象。 前日は、サントリーホールでのコンサートがあったのでお疲れであったと思うのですが とても気さくで、真摯にレッスンに向かい合ってくださったことにとても感謝しています。 英語と中国語を話されます。基本中国語で通訳の方がついてくれました。
The Lark
貴重なレッスンは自分の課題を見つけてもらう時
毎年日本へ演奏しにいらしているので、その時にレッスンが開催されるようなのですが、まあ年に1回のチャンスなわけです。 60分足らずの時間で何を教わるか、何が教われるか! その時の悩みをできるだけ書き出してみた。細かな技術のことから考え方や練習方法。出てくる出てくる。 曲の弾き方をやるとしたらその中でもピックアップしないといけない。おそらく弾き方以前に基本的な所からになってしまうと思った。 「今の自分は何が欲しいだろう?」 美しいと思える音色と音質が欲しい。これを求めて三千里・・みたい旅を続けている。 ビブラートや強弱を抜いた真っ直ぐな音でも、美しく響く。それを体に入れたい。 テクニカルな部分は、その上に積み上げていきたい。
先生もこのような単発のレッスンの意味をもちろんよくわかっていらっしゃるので、こうおっしゃる。 「この時間で直すことはできない。あくまでも問題・課題を見つける時間です」 先生から見れば、どれもこれも問題に見えてしまうだろう中、とてもポイントを絞ってアドバイスを頂くことができました。
聞きたいことが曖昧だと、答えも曖昧
音楽にせよスポーツにせよ、個人レッスンは、受ける側が主体である方が価値が大きい思う。 与えられるのを口を開けて待つのではなく、欲しい果実を求める。
「これを教えてください」の 「これ!」が明確でポイントを絞る方が、得られるものは大きい。 録音でも、YouTube もいい。この曲のこの音の出し方を教えてください!と投げかけられたら 教える側は、逃げることができなくなる。 そこから、基本的なところへ戻るかもしれないが、「この音」を出すために戻る基本なら道が開けた気がしてくる。 上手くなりたい!では上手くなれないわけで 自分は何ができてていて、何ができていなくて こうしたい!があるのに、こうできない! こうしたいはある意味独りよがりでも、自分の解釈でもいいのだと思う。 音楽の解釈などは最たるもので、もちろんスタンダードはあると思うが、譜面に書かれた強弱記号を守ればいいし、自分の好きなように弾いてもいい。 ただ! 優れた演奏家の音は、同じ譜面をみていても、出音が変わる。 きゅん!と自動反応してしまうところだらけなのだ。 無駄に弾いている音はひとつもなく、全て意味のある音。意味を込めて音を出しているという方があっているかな。 だから、その一音の求め方を教えてもらうだけで、沢山の学びが出てくる。
何を遠慮することなく「音」を求める。 開放弦だけでで感動させられる音が出せたなら、それはすごいレベルに到達していることだと思う。
音の求め方を持っている先生
素晴らしい演奏家はたくさんいる。 演奏しているところを見せて、はい!やってみて!とできる人のことを世の中では「天才」と呼ぶ。 素晴らしい音を、サクッと出せてしまう天才は、教授には不向きだ。 求めて、求めて、その求め方を知る人が、教授に最適な能力なのだと思う。 凡人の自分には、何をしているか、言語化された解説が必要なのであります。 言語化した上で、実践すると吸収率があがるわけだ。 ただ譜面を弾くだけなら、そんなに困ることもない。 どんな音で弾きたいかが、音楽の悶絶するところで。。 音の求め方を言語化できる先生が、教えるのが上手な先生と言うことになるのだと思う がっ・・ 教えるのも一流!演奏も一流!と言う音楽家は、すごく稀な存在なのかもしれない。そんな一流の先生がいたとしても、ついていける生徒さんも稀な存在でしょうしね。
レッスン中におきた脳内革命!
今回Zhao Leiさんから教わったことで、自分の頭の中で起きた革命がある。 「お客さんは、演奏であなたのしている呼吸と同じ呼吸をしながら聴く。」 この言葉が刺さる人と、刺さらない人がいるかもしれない。 それまでの私には、全く考えたことがなく、周りの音楽家とも話題にしたことがなく、 ものすごい脳内革命がおきた言葉だった。
今まで、自分の中だけで鳴っていた音が、一気に外へ流れだした感覚になった。 これに気づけただけで、大きな大きなギフトとなった。 学びは、求め続ければ、必ず自分に必要な時にベストなタイミングでやってくる。 教わったことは、残念ながら教えられないけども♡
迷子になる時
二胡をやっていていて、よく迷子になる。 迷子は2パターンあって 行き先があるけど、道がわからなくなる状態 行き先がいくつもあって、どこにいけばいいかわからない状態
いずれにせよ迷子は自分のいる場所がわからなくなって、道に迷っているわけで 前者は、目標をすでに達成している指導者に出会えるといい。道を照らしてもらえればいいのだから。 後者は、交通整理をしてくれる指導者に出会えるといい。行き先はいくつもあるわけではなく、チェックポイントのようなもので、本当はあそこに行きたいんだよね と一緒に見つけてもらえるといい。
自分のいる場所がわかる方法がある 場を作って、ソロで人前で演奏してみることだ。 演奏会とかそんな大きなものでなくてもいい。かといって仲間内の練習会の延長はだめ。 演奏する場で、お客様がいるという空間の中で弾いてみる。 一人で、弾くということがとても大切。良いも悪いも全て自分のギフトになるから。 やった人にだけ、もらえるものがある。 こう弾けるようになりたい!が明確になるの。じゃあどうしたらいい?という課題も明確になる。地図が手に入る。 今の自分いる場所はここだ!って。
一人でやるというのは、確かにたくさんのハードルもある。 けど迷子から抜け出る方法として、私はとても良い策だと思っている。
教えというの、一人の人からだけではなく、色々なところで受けられる。 本の中、動物から、自然の中からだって受けている。 あまりにも多いと、また迷いの種にもなるが、迷いながらも一つ一つ自分で決めていく。 そして、決めた自分を信じきる。
そんな繰り返しなのだと思う。
最後に後悔・・・
こういうレッスンをただ受けてみたい!という興味だけで受けるのは実にもったいない。時間もお金も。 単発でレッスンを受けるのは、その時間で得たいものを明確にして受ける!と実りが大きいだろう。 ただ、これは難易度が結構高いのも確か。だからと言って、私なんか・・といって遠慮していても前に進めない。 正直に素直な自分でそこに存在できればいい。 そうすれば学びはたくさん起こる。
最後に、終わってみて後悔したことがある。 一曲弾いてもらえればよかったと終わってから気づいた。 その演奏と音をがっつり目の当たりにしてくることを、リクエストすればよかったと後から気づいた・・・。 またnext chance!
Comments