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最高の演奏をするには〜EFFORTLESS MASTERYを読んで

  • 執筆者の写真: 郁代 麓
    郁代 麓
  • 1月10日
  • 読了時間: 7分

更新日:1月11日

音楽に限らず、本番に緊張はつきものですが

あの緊張は一体どこからくるものやら。

緊張で震えるとか、声が出ないとか、そんな経験は誰しもあるのだろうと思います。

心臓が口から出そうになったことは数知れず。(実際出たことはないんですけどね 笑)


いいパフォーマンスをするには、実はある程度の緊張は必要です。

で・す・が!過度な緊張はパフォーマンスを下げます。

下げるどころか、終わった後の悔しさで海溝レベルで沈み込みます。もうこのまま浮上しないんじゃないかって・・思うこともある。

そして、また猛練習が始まっちゃって(笑

こんな繰り返しを何度したことか。


みんなどうしているんだろうか、沢山場数を踏むと緊張なんてしなくなるのか?

そんな疑問がいつも湧きます。


ある音楽家の方とおしゃべりをしていました。

「もう○田さんくらいになると本番で緊張なんてしないですよね?」

「いやいや、するよ。」

「でも大したことないんでしょ」

「いや、震えるなんてもんじゃない。ガタブル」

「えっそなの?」

音楽で生活をしているクラスの方でもそうなるんだ〜と意外なような、安心したような。。


緊張は、素人だからするもんなんだ、なんて勝手な思い込みをしていた事もありました。


そんな話をカウンターの中で聞きながら、店主がこれ面白かったよ、と勧めてくれた本がありました。


「EFFORTLESS MASTERY」Kenny Warner著

Kenny Warnerさんは、アメリカの著名なジャズピアニスト。


「EFFORTLESS MASTERY」
EFFORTLESS MASTERY

この本は、音楽の希望を叶えるための努力が身を結んでいない人や、演奏をするときに緊張して萎縮してしまう音楽家に向けて書いたもの。


30年演奏を続けているが楽しめたことがほとんどないという人

他の演奏家と比べて何か自分にはないものがあると思っている人

何年も練習しているのに伸び悩んでいる人

そういう人に読んでもらいたい

と書いてあった。


著者のKenny Warnerさんの演奏は卓越していて素晴らしい。

素晴らしい演奏者は他にも沢山いるが、ケニーさんにはその本番での素晴らしい演奏が、どうやったら行うことができるのかをを言語化する才能があり、この著書に繋がったようだ。




筆者の言葉を引用しながらも、私の解釈も交えながらこの本に書いてあったことをまとめてみました。


いわゆる”ゾーン”に入るということ。

ゾーンと同じような意味を持つ言葉として、フロー、無我の境地、忘却状態、トランス

このような状態のことを変性意識とも言いますが、これは何か一点に集中している状態に起こるもので、脳波がα波(大体13Hzくらいから)から下の状態と言われています。

意識の深さによって、達する境地はかわってくる。


車を運転している時も、一つのトランス状態と言えます。

意識をしなくても勝手に動く状態。

無意識にできる物事ってありますよね。自転車を漕ぐ、歯磨きをする、掃除機をかけている時もそうかもしれません。スイッチ入れて、前に後ろに!なんて考えて動いていませんものね。私は家の鍵を閉めるというのは、いつも記憶になく無意識で締めています。(これあまりいいことではないですが・・)

習慣化された行動は、そんな無意識の中でこなしています。


とてもリラックスした状態で、何かを一つのことをこなす。


瞑想するとか、催眠をかけられるとか、そういうことだけではなく、日常茶飯事に行なわれていることで、何か特別な儀式をしなくてもできるということになります。


青空の下、風を感じながら気持ちよ〜〜く、スイスイ自転車を漕いでいる時のように

ゴミを見つけて、掃除機が勝手にゴミに向かって吸い込んでいくように

歯ブラシが気持ち悪いところを見つけてゴシゴシするように


結果など求めなくても、最適な結果に向かって自動的に向かうシステムを、人は日常茶飯事に使っているわけ。


このリラックスした状態を意図的に作り出そうとすると・・リラックスどころか緊張しちゃたりして。


ここぞという集中したい時に、中々できない!という経験は沢山あるのではないでしょうか。

原因はたった一つ。

思考が動き出すこと。

心の声とでも言いましょうか。


ミュージシャンで言えば

自分のパフォーマンスを阻む声が沢山聞こえてきます。

「上手く演奏したい、他のミュージシャンよりもいい演奏したい、失敗するなよ、今ミスしたでしょ、音を外しちゃだめ」


上手く演奏しようと思えば思うほど、悪くなる。

これは、上手くできないことへの「恐れ」が起きるから。

恐れから逃れるための練習を、筆者は「ネガティブな練習」と呼んでいる。

ネガティブな練習を繰り返していると、悪いクセがどんどん染み込んでいく。

そんな練習はしない方がマシだと。

意識が恐れに変わると、集中することも吸収することもできなくなる。


無意識の対極にいるのが思考(意識)。

思考こそが問題の大部分を占めているわけです。


人は、自分の意識に支配されていると言ってもいい。

そういう状態では、創造性を導かれるものがない。

深い演奏をしたい願望がある一方で、もっと上手く演奏したいという欲求が起こる。


まず捨てるものは

「上手く演奏したい」と考えること。


意識が穏やかになれば、アーティストは内にある聖なる音楽の源泉から汲み取ることができる。

無我と完全なる集中の境地。

インスピレーションと内なる繋がり

探し求める究極の安心感は、自からの内にのみ見出せる。

筆者はこの状態のことを、スペースと呼んでいる。

スペースはただその瞬間を体験するだけ


この境地に達するために用いられるのが「瞑想」だ。


本書では瞑想への手順も述べている。瞑想の手順はここでは省く事にします。


この本の中で提示されているのは

・練習する時には完全に集中する

・演奏するときは全てを解き放ち

・身体、意識、魂をフルに使い

・音楽への愛を取り戻す。


練習こそスペースに入って行い、スペースから出てしまった時は楽器から一旦手を離す

また、スペースに入って練習を重ねることが大切。

1小節を吸収していく。ゆっくり正確に気持ちよく。その一小節に慣れるまでだ。

課題が自ら演奏するようになるまで、徹底的に辛抱強く練習する。


前にも述べたように、ネガティブな練習が、深い演奏の境地へと連れていってくれることはないのである。


そして、今まで染み付いた教育の賜物である、意識の書き換えも必要だ


私の音はまだ足りない、私の存在は世の中にいらない

音楽は難しい

私は、音楽を演奏するのが苦しくてたまらない

私の音楽はいつでも未熟

私の音は綺麗じゃないし、美しく聞こえない

こんな事を考えたことは何度もあるし、そう言わないと誰かに失礼な気もして。


こうした自分を再プログラミングする。


1 私は達人だ 私はとても素晴らしい

2 音楽は簡単

3 私は苦もなく音楽を演奏する

4 私は音楽を達人として演奏する

5 私が奏でる全ての音は、私がこれまでに聞いた中で最も美しい音だ


これらの言葉をアファメーションで自分にプログラムしていく。

アファメーションは、自分に伝えるメッセージ。

毎日、何度でもこのような言葉を自分に伝える。必ず変化があるはずだ。


そして、そんな自分でスペースに入っていることが、音楽を自由にしていく。


間違った音など一つもない、自分が音楽そのものなのだ。

音の持つ力は、その音がどれくら強いと信じて演奏するかによって決まってしまう。


楽器を弾きながら、どうやってスペースに入りつづけていくのか。

その練習方法も具体的に述べています。

どの練習も全て、繰り返し根気よく続けていった先に、欲しい状態があるわけで

素直に純粋に行動した分だけ、手に入るものなのである。


瞑想していれば、楽器の達人になれるわけではない。

しかしながら、スペースに入れず上手いだけの演奏よりも

スペースに入った下手くその演奏の方が、聴者の心揺さぶるのは確かなのだ。


何かいい方法や考え方を知っているだけでは無意味で

それを実践して習得することに意味が生まれる。



こんなことが書かれている内容でした。

心理学的なアプローチも多く、英語を翻訳しているものなので、何か違和感を感じる表現も多い。読んで単純にひらめくほどの気づきを得られかと言うと・・読む人の経験値次第なところもあるかもしれない本でした。

私は、すごく求めていた部分なので大きな気づきがありました。

何回か読み返し、こうしてアウトプットすることでまた自分に落とし込むという作業。


もし、誰かの気づきになったとしたら幸いです。









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